前回、ペン字を練習していると書きましたが、見本帳は昭和58年初版発行『基本ボールペン字練習帳』です。母の遺品のひとつです。
母は読書家でした。晩年は目が疲れると言ってあまり読まなくなっていたので、変色して埃っぽい本が残されました。アレルギー持ちの私には大敵です。くしゃみを連発しながらほとんどを処分しましたが、気になった数冊の本とともに練習帳を持ち帰りました。だって一文字も練習してないんです。古いけど新品で捨てるには忍びなく、よし!母の遺志を引き継ぐぞ……ってほどでもないけど。
ともかく『くせ字でもたちまち上達する』らしいので、いろはから練習をしています。「ゑ」を初めて書きました。もう書く機会はないだろうにわりと上手に書けてしまい、せっかくなら苦手な「を」にして欲しかったと思ったりしています。
字は縦線と横線と丸みの組み合わせで、それぞれの文字に指導が入ります。
「末端をスーッとていねいに針をつるしたようにぬく」
たて線の指導です。全くイメージがつかめず、手がへんてこな格好になりました。それでも息を詰めて、はねやとめに神経を注いでいると、ふーっと力を抜いた時にささやかな快感が伴います。
字を書く感覚を久しぶりに思い出しました。悪くないです。少し賢くなったような気さえします。
「やったら出来る子やのに」母の残念そうな声がします。
お彼岸です。母を偲ぶと言うより詫びる気持ちで『基本ボールペン字練習帳』を埋めようと思う徒然
